2017/07/14 00:00

ベスト・アルバム配信開始!──ボンジュール鈴木が描く、どこまでも甘美な魔法の世界

ボンジュール鈴木といえば、エレクトリック・サウンドと砂糖菓子のような甘い歌声が魅力のシンガー・ソングライター。今期放送のTVアニメ『魔法陣グルグル』EDにも起用されているTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND「Round&Round&Round」への歌唱参加など、数多くのクリエイターからのラヴコールも絶えない彼女が、満を持してベスト・アルバムを発売!それに伴い旧作3作品もリマスター版がリリース。今回は待望の配信と共に、メール上でインタヴューを敢行。併せて熱の籠ったレビューもお届けします。

待望のベスト・アルバム!
ボンジュール鈴木 / The Best of Bonjour Suzuki

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム価格 1,782円(税込)

【収録曲】
01. 甘い声でちくってして
02. キミと恋したいのです
03. ごめんあそばせ
04. 21時のクラゲと月
05. Tick Tock Skip Drop
06. Lollipop シンドローム
07. 金魚
08. Pipo Password
09. Lovin' You
10. 5番目のPoupee "コレット"
11. 私こぶたちっく
12. allo allo
13. アゲハ蝶の破片とキミの声
14. 月のかけてく夜に
15. pm9:55
16. Je ne sais pas pourquoi
17. あの森で待ってる

INTERVIEW : ボンジュール鈴木

いまだカルト的人気を誇る『少女革命ウテナ』の監督・幾原邦彦によるTVアニメ『ユリ熊嵐』主題歌に新人ながら抜擢されたことで、ボンジュール鈴木が世間にその名を轟かせたのは言うまでもないだろう。かくいう私も、「あの森で待ってる」をきっかけに彼女の作り出す音楽に魅了されたひとりだ。一癖も二癖もあるウィスパー・ヴォイスに、夢のようでロリータチックな世界観。その作風はいまだ他に類を見ない。今回はそんな彼女の魅力をぎゅっと1枚に押し込んだベスト・アルバムについて、メール上で語ってもらうことに成功した。是非レヴューと共にお楽しみください。

インタヴュー・文 : 阿部文香

日常生活を忘れてしまうような1枚

──ソロ名義では2年ぶりのリリース、おめでとうございます。

ありがとうございます。

──前作の『Lolipopシンドローム』に引き続き、今井キラさんがジャケット・イラストを手掛けられてますよね。キラさんに依頼するまでの経緯がお聞きしたいです。

今井キラさんは、独特で個性的な感性でご自身の世界観を表現されていて、以前からとても大ファンでした! (今回も)お忙しいなかお引き受けくださいました。今回は曲の雰囲気や、私のボーイフレンド役の水色のクマさんとの微妙な関係を、絵本のような素敵な世界観のなかで描いてくださって。とてもうれしかったです。

──今回のアルバムにはTomgggさんやTeddyLoidさんなどの作品に、ゲスト・ヴォーカルとしてフィーチャーされたトラックも収録されていますよね。ゲストで参加する際、なにか気をつけていることはありますか?

まずは曲でフィーチャリングしてくださるプロデューサーの方と、どういう雰囲気にするか先にお話させていただいて。それから「こういう歌い方はどうですか?」などとご相談してRECすることが多かったです。

TeddyLoidさんの「Pipo Password」は、自分のスタジオで何種類か歌い方を変えてRECしたものをTeddyさんに選んでいただいて。それからミックスしていただいたものを聴いてみたら、(自分が歌ったもの中から)いろいろな箇所を選んでとても素敵に仕上げてくださっていただいて! 感動しました。TeddyLoidさんのおかげだと思うのですが、特に海外のエレクトロ好きの方々からのメッセージも多くって。改めて「この曲の持つ力ってすごいなぁ」と感じています。

TeddyLoid feat. ボンジュール鈴木/Pipo Password
TeddyLoid feat. ボンジュール鈴木/Pipo Password

Tomgggさんは、歌詞の段階からイメージを伝えて下さって、歌詞の意味合いからも歌い方などを細かく指導して下さりながらスタジオでRECさせていただきました。かわいいトラックの中にも感動する箇所が散りばめられていて、美しいメロディと歌詞の持つ響きを壊さないように歌わせていただきました。

──TWOTHさんの曲は、最近の曲ですし、1番記憶に新しいですね。

TWOTHさんの曲は、アニメーションの企画のOP曲でしたので、「主人公のイメージはどういう雰囲気がいいですか?」などとご相談しながらRECさせていただきました。TWOTHさんの独特のメロディがどこかフレンチ・ポップに通じる気がして、「どうやって表現しようか!」って。とても楽しかったです。

ESNOさんの曲は、トラックのとても素敵な雰囲気からイメージで浮かぶメロディと歌詞のバランスを大事にしながら歌わせていただきました。

──曲順を決める際、気をつけたことなどはありますか。

1枚聴いたときに日常生活を忘れてしまうような、違う次元にいってしまうような曲と曲順を考えながら決めさせていただきました。

毎回毎回、テストを受けてるみたいな気持ち

──ボンジュール鈴木さんは2015年の「あの森で待ってる」以降、多くのタイアップで歌唱参加や楽曲提供を数多くされていると思いますが、そうした活動をいまいちど振り返ってみて、大きく変化した点はありますか。

こうして歌わせていただけるのはいつも奇跡だと思っています。 「ボンジュール鈴木で」と決めて下さった制作の方々、関係者の方々、応援してくださる方々のおかげで、私はいまこうして歌わせていただいているので、これで最後にしないように、作品でみなさんに感謝の気持ちを伝えられるように、がんばらなければという思いが大きくなっています。毎回毎回、テストを受けてるみたいな…… 。

でも、もともと子供の頃からアニメの音楽のお仕事ができるようにピアノも歌も勉強していたので。 プレッシャーもとても大きいですが、またいつかアニメのお仕事ができるように頑張りたいです。

──ちなみに、一番のお気に入りの曲はどれですか。

「あの森で待ってる」です。幾原邦彦監督、『ユリ熊嵐』制作の方々、私の制作に携わってくださった方々、応援してくださる方々が、今現在の全てのチャンスを与えてくださったので、新しい環境で頑張って成長できるように変化をしながらも、この曲を大事にしていきたいです。

──逆に、一番完成に至るまで苦労した楽曲はありますか。

「Lollipopシンドローム」のドリーム・ポップとエレクトロとJ-POPのいいバランスにするミックスが、なかなか自分の思うとおりにできなくて、何度もやり直ししました。

ボンジュール鈴木/Lollipopシンドローム
ボンジュール鈴木/Lollipopシンドローム

──私はボンジュール鈴木さんの甘いウィスパー・ヴォイスとパステルカラーで彩られたようなドリーミーな楽曲の世界観が大好きなのですが、そんな今の作風に至ったきっかけはなんですか。

わぁ! うれしいです。ありがとうございます。私はもともとヨーロッパの音楽や、ドリーム・ポップやトリップホップ、エレクトロなどの非日常的な世界に連れて行かれちゃうような不思議な雰囲気の音楽が大好きで。それでトラックを作りはじめたのですが、『涼宮ハルヒの憂鬱』の朝比奈みくるちゃんのキャラソンを聴いたときに、かわいすぎて「日本人でよかったー!! 」って感動してしまって…… 「この2つの異なる世界を合わせたような曲ってできないかなぁー?」と思いはじめたのがきっかけかもしれません。

──最後に、アルバムを聴いている人たちに何か一言ありましたらお願いします。

非日常的な世界へトリップしていただけるような曲をできるだけ多く詰め込みました。疲れた日などに、少しでも癒していただけたら嬉しいです。

REVIEW : ボンジュール鈴木『The Best of Bonjour Suzuki』

砂糖菓子は口の中に入れると同時に、甘さを残して一瞬で溶けて消えてしまう。ボンジュール鈴木の音楽は、まさにそんなお菓子のようだ。恋する気持ちを詰め込んだキラキラのエレクトロ・サウンド、そして甘すぎるくらいのウィスパー・ヴォイス。今回のベストはそんな彼女の緻密に構築された美しくキュートな世界観を、まとめて一枚に凝縮したアルバムになっている。いまやウィスパー・ヴォイスを持ち味にしたアーティストは珍しくなくなってきたが、そんな中でもボンジュール鈴木の歌声は極めて特徴的だ。カヒミ・カリィを彷彿とさせる過度に吐息の交じった声は、甘すぎるくらいに甘く、消えてしまいそうな儚さを孕んでいる。

それはコラボレーションの楽曲でも顕著だ。ESNOとの楽曲「21時のクラゲと月」では、洗練されたサウンドの中で、繊細で消え入りそうな彼女の魅力が存分に引き立っている。Tomggg、TeddyLoid、Twothとのコラボ楽曲でも各々のクリエイターの色が色濃く出ているにも関わらず、歌声が持つ圧倒的な力によってキャラクターが作り上げられているのだ。彼女が歌うことによって、各々の曲は「ボンジュール鈴木」というフィルターを通した作品になる。ラヴコールがやまないのも納得だ。それは言うなれば魔法のようなもの。ベストである今作においても、オリジナル楽曲との境目に違和感を感じずすんなりと聴けるのは、やはりそこが大きいと思う。

ESNO/21時のクラゲと月 feat. ボンジュール鈴木
ESNO/21時のクラゲと月 feat. ボンジュール鈴木

一方、ソロの楽曲においては「恋する乙女」というキャラクターがより明確に描かれている。彼女の音楽を語るにあたって恋愛は切っても切れない。古くから多くの作品に描かれるように、誰かに恋する少女というのはその瞬間しかまとわない独特の“輝き”を放っている。彼女の楽曲はそのきらめきを掬い取るのがとても上手いのだ。フランス語交じりのストレートなリリックはもちろん、繊細に重なり合うコーラスワーク、秘密めいた世界を映し出すメロディライン。音像は夢の中のように幻想的で、人によっては甘ったるくも感じることだろう。でも霧のように立ち込める甘さの中には、恋愛の疾走感、片想いの苦しさ、狂おしいほどの愛情が、飴玉のように転がっている。だから強く惹きつけられるのだと思う。

ボンジュール鈴木/キミと恋したいのです
ボンジュール鈴木/キミと恋したいのです

ボンジュール鈴木自身が「非日常的な世界へTripするようなアルバム」と語るように、このアルバムは聴き手を異世界へと誘う。<キミと恋したいのです したいのです>と歌った少女は幻想的な世界を彷徨い、恋する誰かの影を見る。森の中を駆け抜け、月に気持ちを託したり。絵本のページをめくるように、少女はトラックをまたいだ片想いをし続けるのだ。

アルバムの最後を締めくくる「あの森で待ってる」は、まるで教会音楽のような穢れのない美しさと、言いようのない切なさが胸いっぱいに広がる楽曲だ。<ずっとあの場所で待ってるから からっぽの世界の中 すべて壊れちゃっても>と歌う歌詞には、恋が叶わぬことを予期するような、そんな諦念がある。でもそんな諦め以上に、この曲には相手への愛と包容力があふれている。片想いは独りよがりでも、愛はずっとそこにあり続けるものだ。1枚聴き終えた後も、きっとあなたはまだ微睡みの中にいるような錯覚を覚えることだろう。このアルバムはきっと、誰かを想う気持ちに寄り添ってくれる。優しくて甘い砂糖菓子のような音楽に、あなたも溺れてみては?

過去作品はコチラ

ベスト盤と同時に、過去作品のリマスター盤もリリース!

ボンジュール鈴木 / 私こぶたちっく (Remaster)

2015年1月に発表し、iTunesのエレクトロニック・チャート1位を獲得した初の全国流通となるファーストEP。表題曲「私こぶたちっく」をはじめ、彼女のウィスパーボイスの魅力とキュートなエレクトロ・サウンドに心が躍らされる意欲作。

>>この作品の特集ページはこちら

ボンジュール鈴木 / さよなら。また来世で (Remaster)

2015年4月発表の1stフル・アルバム。YouTubeで絶大な再生数を誇る名曲「アゲハ蝶の破片とキミの声」をはじめとして、透明感たっぷりの世界を極上のエレクトロニカで描き出す。『ユリ熊嵐』の主題歌として知られる「あの森で待ってる」をさらにドリーミーに仕上げたセルフ・リミックスも収録。

>>この作品の特集ページはこちら

ボンジュール鈴木 / Lollipopシンドローム (Remaster)

2ndミニ・アルバム。表題曲「Lollipopシンドローム」の他に、ミニー・リパートンのカヴァー「Lovin’ You」を収録。さらにロリータチックで幻想的な魅力を高めたアルバムとなっている。

RECOMMEND

ボンジュール鈴木 / あの森で待ってる(24bit/48kHz)

TVアニメ『ユリ熊嵐』の主題歌として起用された、自他共に認める彼女の躍進作。女の子の脆さと美しさが共存したような、一種官能的な夢の世界が繊細なサウンドで表現されている。

>>この作品の特集ページはこちら

★STAR GUiTAR / Here and There(24bit/48kHz)

ダンス・ミュージックを基軸にさまざまな作品を生み出し続ける★STAR GUiTARがこれまでにリリースした7枚の中から、<歌モノ>にフォーカスしたベスト盤。ボンジュール鈴木がゲスト・ヴォーカルを務めるThe Chemical Brothersのカヴァー「Star Guitar」は、疾走感たっぷりのエレクトロ・サウンドに彼女のの魅力的なコーラスが華を添え、独自の世界を生みだしている。

石膏ボーイズ / 星空ランデブー(24bit/48kHz)

ボンジュール鈴木が作詞を手掛けた異色のTVアニメ『石膏ボーイズ』テーマ曲をハイレゾで配信。世界初の石膏像アイドル・ユニットが繰り広げる、シュールでポップな世界に注目!彼女自ら歌唱したヴァージョンも必聴だ。

PROFILE

ボンジュール鈴木

作詞作曲・編曲、歌、演奏、mix マスタリングまで1人で行う女性マルチ・アーティスト、サウンドプロデューサー。 幻想的でファンタジックなトラックの上に、ピアノ、お箏、Viola、アコーディオン、ハンドベルなどの楽器を 生で重ね、サンプリングした犬の声や自然音なども混ぜ、面白い音作りを目指している。 3 歳よりクラシックピアノをはじめ、Jazz 歌手だった母とフランスの親族の影響で 幼少期からヨーロッパを中心とした様々な音楽に触れ、次第に作曲活動をスタート。 南フランスのカトリックの大学へ留学中に触れた、ヨーロッパのエレクトロニカ/ヒップホップ・シーン、 クラシック、教会音楽からの影響が色濃く出たサウンドには、北欧エレクトロニカ勢と共鳴する「透明感」と、ドリームポップ、 トリップ・ホップの流れを汲んだ「深遠な響き」が見事なまでに共存。 『日本語』『フランス語』『英語』を POP なメロディーで織り交ぜ、フランスのボイストレーニングで身につけた、甘ったるい中毒性のある独特のロリータウィスパー・ヴォイスと絡み合う童話の中のようなファンタジックで不思議なサウンドは、現在の音楽シーンの中でも一際異彩を放っている。  

>>ボンジュール鈴木 オフィシャル・サイト

>>ボンジュール鈴木 オフィシャルTwitter

この記事の筆者
阿部 文香

1996年生まれの大学生。駒澤 零(こまさわ れん)って名前で絵も描いてます。Twitterは@ren_ren0824。

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[インタヴュー] ボンジュール鈴木

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